2021.11.13
 

本多愼一郎×小沢道成
『演劇を続ける』という選択をしたことが、次の世代の希望になれば


2021.11.13
 

本多愼一郎×小沢道成
『演劇を続ける』という選択をしたことが、次の世代の希望になれば


たった一人で、本多劇場に立つ。
 
その険しい道のりを歩み出した小沢道成が、今話したい人とじっくり対話を重ねるインタビュー連載。第1回の対談相手は、本多劇場グループ総支配人・本多愼一郎さんです。
 
下北沢を演劇の街にした父・本多一夫氏の跡を継ぎ、今年8月には松竹芸能から運営を引き継いで、2009 年 3 月に閉館した新宿シアタートップスを再開させた本多愼一郎さん。厳しいコロナ禍で新たに劇場をスタートさせるというその決断に、小劇場ファンは歓喜と驚きの声をあげました。
 
共に「無謀」と言われるような道を選んだ二人。それでもやってみようと決めた心の内を明かし合いました。

 
 


 

たった一人で、本多劇場に立つ。
 
その険しい道のりを歩み出した小沢道成が、今話したい人とじっくり対話を重ねるインタビュー連載。第1回の対談相手は、本多劇場グループ総支配人・本多愼一郎さんです。
 
下北沢を演劇の街にした父・本多一夫氏の跡を継ぎ、今年8月には松竹芸能から運営を引き継いで、2009 年 3 月に閉館した新宿シアタートップスを再開させた本多愼一郎さん。厳しいコロナ禍で新たに劇場をスタートさせるというその決断に、小劇場ファンは歓喜と驚きの声をあげました。
 
共に「無謀」と言われるような道を選んだ二人。それでもやってみようと決めた心の内を明かし合いました。

 
 


 

チラシの良さと本編の良さは比例している気がする
 
小沢 今日は愼一郎さんとお話しできるのがすごく楽しみで。せっかくの機会なので、いろいろお話を聞かせてください。
本多 こちらこそよろしくお願いします。
小沢 早速なんですけど、愼一郎さんは普段から結構お芝居は観るんですか。
本多 そうですね、そこそこは。
小沢 その中で『夢ぞろぞろ』はどうでしたか。
本多 面白かったです。よくこの劇場(シアター711)でこれだけ転換するなって。
小沢 確かに(笑)。
本多 セットがまわるじゃないですか。あれがあることで、本当は忙しいはずなのに、逆に忙しくない印象がしたんですよね。
小沢 どういうことですか。
本多 たぶんセットがまわる間尺がちょうどいいんだと思う。本来あの尺のお芝居であれだけ場転があると、もっと慌ただしい感じがするはずなのに、ゆったりセットがまわる時間があることで、落ち着いて観られる。スピード感がちょうどいいなと思いました。
小沢 面白い。初めて言われました、それは。
 
――本多さんはいろんな劇場を運営されていますが、お芝居を観るときはどういう視点からご覧になりますか。やはり小屋主ならではの見方があったりするんでしょうか。
 
本多 いや、普通ですよ。小さい頃も含め、それなりの数を観てきましたけど、いまだに目線は普段それほど劇場に行くことのないお客さんと同じ。深いことなんて全然考えてないですし。単純に観て、感想も「面白かった!」とか「すごかった!」とか、そんなのばっかりで…(笑)。
小沢 お芝居を観に行くときの動機はどうですか。観る作品を選ぶときの基準とか。
本多 チラシを見て面白そうかどうかというのが大きいかもしれない。それこそ、人に勧められた芝居でも、チラシを見てそそられるものがなかったら行かないこともなきにしもあらずで。
小沢 わかります。僕もチラシに惹かれることは結構多いので。やっぱり大事ですよね、チラシって。
本多 それこそコロナで一時期置きチラシが一切なくなって。そのときに実感しましたね、やっぱりチラシって大切だったんだなって。劇場に着いて、客席に座って、上演を待つまでの間、なんとなく置いてあるチラシをちらちらと見る。それまでは当たり前すぎてなんとも思っていなかったものが、いきなりなくなると急に寂しく感じるというか。
小沢 わかります。
本多 前はね、持って帰るときに邪魔だとか思っていたんだけど(笑)。意外と家に着いてから見たりするんですよね。演劇界においてチラシというのは大切な文化なんだと、コロナを経て気づかされました。
小沢 僕もよくお芝居を観に行くんですけど、束の中に自分の公演のチラシが入っていたりするんですね。斜め前の人とかがなんとなくチラシをチェックしてて、僕のチラシだけ他と分けるように違う指で挟むのを見ると、やったーって気持ちになる(笑)。それが見たくて、早めに着いて、ちらちら周りを観察してるんですけど。
本多 ありますね。チラシを見て何か気になったものは分けておいて、あとでまた見返してみたいなことは。
小沢 僕も知らない人のお芝居を観に行くときのきっかけはチラシで。デザインがいいものとか、なんか面白そうって気になるんですよね。で、その直感はだいたい当たるんです。チラシの良さとお芝居本編の良さって比例している気がして。そういう直感を信じて観に行くのも、舞台の楽しさだなと思います。
 
 
やっと劇場だね、と言えるまでに5年はかかる
 
――これまでEPOCH MANでは、OFF・OFFシアター、駅前劇場、シアター711で公演を打ってきました。上演側が感じる本多劇場グループの魅力とはどんなところでしょうか。
 
小沢 すごく自由なんですよね。こんなにもこちらの「こんなことがしたいんですけど」という要望に「いいですよ」と言ってくれるのは本多劇場グループさんだけじゃないかというくらい(笑)。
本多 そうですね。うちは基本的にできる限りのことには応えようというスタンスなので。
小沢 この9月に(虚構の劇団に所属する三上陽永、杉浦一輝、渡辺芳博が立ち上げた)ぽこぽこクラブがシアタートップスで公演をやったんですけど。そのときに愼一郎さんが「平台は綺麗に使うんじゃなくて、どんどん傷がついていいものだから」というようなことをおっしゃっていたと聞いて。なんて素敵な考え方なんだろうと思ったんですよ。
本多 前提として、劇場はみんなに使ってもらってなんぼという考え方なんですよ。これは、新しい劇場がオープンするときにいつも感じることで。やっぱりオープンしたばっかりの劇場ってなんか空気が違うんです。それはまだそこに何もないからで。そこから毎週毎週、いろんな団体がいろんな芝居を打って、いろんなお客さんがそれを観に来る。そうやって少しずつ劇場の空気というものが生まれてきて。なんとなく劇場っぽくなってきたなと思うのに、最低1年はかかる。
小沢 すごい話。聞いてて、鳥肌が立ってきた…!
本多 やっと劇場だねと言えるようになるのが、5年くらいかな。いろんな団体に使ってもらって、いろんなお客さんに来てもらって、劇場がそれなりに傷ついたり汚れたりとかしながら、どうにか劇場の形になると思っているんです。
小沢 そうか。平台が汚れたり、壁がくすんだりするのも、人が使っているからですもんね。
本多 そしてそうやって劇場を使ってもらっていると、いろいろわかってくるんですよ、改善点が。逆に言うと、使ってもらわないと、こちらだけでは気づかないことがたくさんある。みんなに使ってもらって、ここはもっとこうだと便利だとか、そういう話をたくさん聞いて、直せるところはちょこちょこ直して、そうやって劇場らしくなっていく。
小沢 ちゃんと聞かれるんですね。こちらの要望を聞いて直してくださるのは、使う側としてはうれしいです。
本多 よくあるんですよ。団体さんが公演のときに使ったものを、これ他の団体も使えると思うんでよかったら使ってくださいって置いていってくれることとか。
小沢 よくわかります。僕も劇場に合わせて舞台美術を設計するので、ぴったりの角度の平台がないときは自分で作るんですけど。すごいこの劇場にぴったりなんで、よかったらどうぞっていうことはあるから(笑)。
本多 でもそれって、劇場をつくっている段階では想定できないんです。僕らが想定できるのは、実際の半分くらい。残りの半分は使った人たちの話を聞きながら埋めていく。そうやって、100%なんてものはないけど、少しずつ100%に近づけるように劇場を育てていくという感じなんです。
 

チラシの良さと本編の良さは比例している気がする
 
小沢 今日は愼一郎さんとお話しできるのがすごく楽しみで。せっかくの機会なので、いろいろお話を聞かせてください。
本多 こちらこそよろしくお願いします。
小沢 早速なんですけど、愼一郎さんは普段から結構お芝居は観るんですか。
本多 そうですね、そこそこは。
小沢 その中で『夢ぞろぞろ』はどうでしたか。
本多 面白かったです。よくこの劇場(シアター711)でこれだけ転換するなって。
小沢 確かに(笑)。
本多 セットがまわるじゃないですか。あれがあることで、本当は忙しいはずなのに、逆に忙しくない印象がしたんですよね。
小沢 どういうことですか。
本多 たぶんセットがまわる間尺がちょうどいいんだと思う。本来あの尺のお芝居であれだけ場転があると、もっと慌ただしい感じがするはずなのに、ゆったりセットがまわる時間があることで、落ち着いて観られる。スピード感がちょうどいいなと思いました。
小沢 面白い。初めて言われました、それは。
 
――本多さんはいろんな劇場を運営されていますが、お芝居を観るときはどういう視点からご覧になりますか。やはり小屋主ならではの見方があったりするんでしょうか。
 
本多 いや、普通ですよ。小さい頃も含め、それなりの数を観てきましたけど、いまだに目線は普段それほど劇場に行くことのないお客さんと同じ。深いことなんて全然考えてないですし。単純に観て、感想も「面白かった!」とか「すごかった!」とか、そんなのばっかりで…(笑)。
小沢 お芝居を観に行くときの動機はどうですか。観る作品を選ぶときの基準とか。
本多 チラシを見て面白そうかどうかというのが大きいかもしれない。それこそ、人に勧められた芝居でも、チラシを見てそそられるものがなかったら行かないこともなきにしもあらずで。
小沢 わかります。僕もチラシに惹かれることは結構多いので。やっぱり大事ですよね、チラシって。
本多 それこそコロナで一時期置きチラシが一切なくなって。そのときに実感しましたね、やっぱりチラシって大切だったんだなって。劇場に着いて、客席に座って、上演を待つまでの間、なんとなく置いてあるチラシをちらちらと見る。それまでは当たり前すぎてなんとも思っていなかったものが、いきなりなくなると急に寂しく感じるというか。
小沢 わかります。
本多 前はね、持って帰るときに邪魔だとか思っていたんだけど(笑)。意外と家に着いてから見たりするんですよね。演劇界においてチラシというのは大切な文化なんだと、コロナを経て気づかされました。
小沢 僕もよくお芝居を観に行くんですけど、束の中に自分の公演のチラシが入っていたりするんですね。斜め前の人とかがなんとなくチラシをチェックしてて、僕のチラシだけ他と分けるように違う指で挟むのを見ると、やったーって気持ちになる(笑)。それが見たくて、早めに着いて、ちらちら周りを観察してるんですけど。
本多 ありますね。チラシを見て何か気になったものは分けておいて、あとでまた見返してみたいなことは。
小沢 僕も知らない人のお芝居を観に行くときのきっかけはチラシで。デザインがいいものとか、なんか面白そうって気になるんですよね。で、その直感はだいたい当たるんです。チラシの良さとお芝居本編の良さって比例している気がして。そういう直感を信じて観に行くのも、舞台の楽しさだなと思います。
 
 
やっと劇場だね、と言えるまでに5年はかかる
 
――これまでEPOCH MANでは、OFF・OFFシアター、駅前劇場、シアター711で公演を打ってきました。上演側が感じる本多劇場グループの魅力とはどんなところでしょうか。
 
小沢 すごく自由なんですよね。こんなにもこちらの「こんなことがしたいんですけど」という要望に「いいですよ」と言ってくれるのは本多劇場グループさんだけじゃないかというくらい(笑)。
本多 そうですね。うちは基本的にできる限りのことには応えようというスタンスなので。
小沢 この9月に(虚構の劇団に所属する三上陽永、杉浦一輝、渡辺芳博が立ち上げた)ぽこぽこクラブがシアタートップスで公演をやったんですけど。そのときに愼一郎さんが「平台は綺麗に使うんじゃなくて、どんどん傷がついていいものだから」というようなことをおっしゃっていたと聞いて。なんて素敵な考え方なんだろうと思ったんですよ。
本多 前提として、劇場はみんなに使ってもらってなんぼという考え方なんですよ。これは、新しい劇場がオープンするときにいつも感じることで。やっぱりオープンしたばっかりの劇場ってなんか空気が違うんです。それはまだそこに何もないからで。そこから毎週毎週、いろんな団体がいろんな芝居を打って、いろんなお客さんがそれを観に来る。そうやって少しずつ劇場の空気というものが生まれてきて。なんとなく劇場っぽくなってきたなと思うのに、最低1年はかかる。
小沢 すごい話。聞いてて、鳥肌が立ってきた…!
本多 やっと劇場だねと言えるようになるのが、5年くらいかな。いろんな団体に使ってもらって、いろんなお客さんに来てもらって、劇場がそれなりに傷ついたり汚れたりとかしながら、どうにか劇場の形になると思っているんです。
小沢 そうか。平台が汚れたり、壁がくすんだりするのも、人が使っているからですもんね。
本多 そしてそうやって劇場を使ってもらっていると、いろいろわかってくるんですよ、改善点が。逆に言うと、使ってもらわないと、こちらだけでは気づかないことがたくさんある。みんなに使ってもらって、ここはもっとこうだと便利だとか、そういう話をたくさん聞いて、直せるところはちょこちょこ直して、そうやって劇場らしくなっていく。
小沢 ちゃんと聞かれるんですね。こちらの要望を聞いて直してくださるのは、使う側としてはうれしいです。
本多 よくあるんですよ。団体さんが公演のときに使ったものを、これ他の団体も使えると思うんでよかったら使ってくださいって置いていってくれることとか。
小沢 よくわかります。僕も劇場に合わせて舞台美術を設計するので、ぴったりの角度の平台がないときは自分で作るんですけど。すごいこの劇場にぴったりなんで、よかったらどうぞっていうことはあるから(笑)。
本多 でもそれって、劇場をつくっている段階では想定できないんです。僕らが想定できるのは、実際の半分くらい。残りの半分は使った人たちの話を聞きながら埋めていく。そうやって、100%なんてものはないけど、少しずつ100%に近づけるように劇場を育てていくという感じなんです。
 

 
小沢 ずっと聞いてみたかったんですけど、愼一郎さんはお父様(本多一夫)が次々と下北沢に劇場をつくって。小さい頃からずっと演劇が近くにあったわけじゃないですか。僕なんかからするとすごく羨ましい環境だなと思うんですけど、愼一郎さんにとって演劇はどんな存在だったんですか。身近すぎて当たり前のものだったのか、それとも嫌だなと思うときもあったのか。
本多 本多劇場がオープンしたのが1982年。当時はまだ劇場というのが何をやっているところなのか、みんなよくわかっていなかったんですよ。僕は当時小学生でしたけど、小学生レベルの知識では「劇場=ストリップ劇場」という感じで。もっと大きな劇場は別ですけど、ザ・スズナリのあのネオンの感じなんかもいかにもという感じで。本多劇場をオープンしますと言っても、なんだかストリップ劇場ができるらしいぞみたいなことを言われて、それはちょっと嫌だった記憶はあります。
小沢 確かに。あの感じがスズナリの良さなんですけど、知らない方からするとちょっと怪しく見えるかもしれないですね。
本多 今、スズナリのすぐ近くにバス停があるんですけど、あのあたりに昔は名画座的な映画館があったんですね。よくそこでポルノ映画がかかったりしていて。そういうイメージに引っ張られていたところはあるかもしれない。
小沢 シアター711も元は映画館ですもんね。今、下北沢の映画館というと、下北沢トリウッドくらいですけど、昔はもっとあったんだ。
本多 僕が知っている限りでは2軒ありました。
小沢 昔からやっぱり文化とちょっと関係がある街ってことなんですかね、下北は。
本多 何かしらそういうことをやりたくなる街なんでしょうね。
小沢 僕も自分のお父さんが劇場をやってたら、影響されてやりたくなるかもしんないな。
本多 小さい頃はよく社長(本多一夫)に連れて行かれましたよ、建設中の劇場の工事現場とか。
小沢 本多劇場ができたのはいつでしたっけ?
本多 1982年11月3日です。11月3日は、実は僕の誕生日なんですよ。
小沢 それはきっとお父様がその日に合わせたということですよね。素敵。当時のことは覚えていますか。
本多 覚えていますね。工事現場にいる僕の写真なんかも残っていて。小学生の頃は、劇場で普通に芝居も観ていました。
 

 
小沢 ずっと聞いてみたかったんですけど、愼一郎さんはお父様(本多一夫)が次々と下北沢に劇場をつくって。小さい頃からずっと演劇が近くにあったわけじゃないですか。僕なんかからするとすごく羨ましい環境だなと思うんですけど、愼一郎さんにとって演劇はどんな存在だったんですか。身近すぎて当たり前のものだったのか、それとも嫌だなと思うときもあったのか。
本多 本多劇場がオープンしたのが1982年。当時はまだ劇場というのが何をやっているところなのか、みんなよくわかっていなかったんですよ。僕は当時小学生でしたけど、小学生レベルの知識では「劇場=ストリップ劇場」という感じで。もっと大きな劇場は別ですけど、ザ・スズナリのあのネオンの感じなんかもいかにもという感じで。本多劇場をオープンしますと言っても、なんだかストリップ劇場ができるらしいぞみたいなことを言われて、それはちょっと嫌だった記憶はあります。
小沢 確かに。あの感じがスズナリの良さなんですけど、知らない方からするとちょっと怪しく見えるかもしれないですね。
本多 今、スズナリのすぐ近くにバス停があるんですけど、あのあたりに昔は名画座的な映画館があったんですね。よくそこでポルノ映画がかかったりしていて。そういうイメージに引っ張られていたところはあるかもしれない。
小沢 シアター711も元は映画館ですもんね。今、下北沢の映画館というと、下北沢トリウッドくらいですけど、昔はもっとあったんだ。
本多 僕が知っている限りでは2軒ありました。
小沢 昔からやっぱり文化とちょっと関係がある街ってことなんですかね、下北は。
本多 何かしらそういうことをやりたくなる街なんでしょうね。
小沢 僕も自分のお父さんが劇場をやってたら、影響されてやりたくなるかもしんないな。
本多 小さい頃はよく社長(本多一夫)に連れて行かれましたよ、建設中の劇場の工事現場とか。
小沢 本多劇場ができたのはいつでしたっけ?
本多 1982年11月3日です。11月3日は、実は僕の誕生日なんですよ。
小沢 それはきっとお父様がその日に合わせたということですよね。素敵。当時のことは覚えていますか。
本多 覚えていますね。工事現場にいる僕の写真なんかも残っていて。小学生の頃は、劇場で普通に芝居も観ていました。
 

安全策より、無謀でも今やらなきゃと思った道を選ぶ
 
――コロナ禍で演劇界全体が苦境に立たされている中、本多さんは2009年にその幕を閉じたシアタートップスを再開させ、小沢さんは2022年2月、本多劇場で一人芝居を上演します。
 
小沢 そこは愼一郎さんにぜひ聞いてみたいところです。この状況下でそんな大きな決断をしたのって、きっと愼一郎さんを突き動かす何かがあったんだろうなと思って。僕もそうで。今この時期に演劇をやっていいのか分からない時もあって。でも、なんだか知らないけど、つくらなきゃという衝動が湧いてくるんですよね。この衝動がはたしてなんなのか。自分のためなのか、誰かのためなのか、まだそれはよくわからないんですけど。
本多 勢いじゃないですか。勘と勢い。
小沢 怖くないですか。
本多 怖すぎですよ。まあでも、うちはもともと社長がそういう感じなんで(笑)。
小沢  そうなんだ、勘と勢い。
本多 本人は計算しているのかもしれないですけど、僕には勘で動いているようにしか見えないですね(笑)。
小沢 やりたいと思ったことはやる、みたいな。
本多 話を聞くたびに、なに言ってんだろうと思います(笑)。まあ、僕も同じことを社員からよく言われますけど。
小沢 そうなんですね(笑)。
本多 けど、それでもなにかをつくりたい、今やらなきゃいけないだろうと思う。その衝動はたぶん小沢さんと一緒だと思います。だって、安全策を考えたら、絶対にやめといた方がいいですよ、今新しく劇場をオープンするなんて(笑)。
小沢 やらない方が安全だから。
本多 そう。でも、それが本当に安全な道なのかって、実はある程度年月が経ってからじゃないとわからないじゃないですか。もしかしたら、今無謀に見える選択の方が遠い未来から見ると安全なことかもしれないし。だったら、今やっておいた方がいいんじゃないっていう。
小沢 今やらなきゃいけないっていう感覚は僕もわかるかもしれないな。本多劇場で一人芝居をやることも、冷静に考えればやっぱり無謀なんですよ。今の自分に一人であの客席数を満席にできる力なんてない。でも声をかけてもらったとき、今だって思ったんです。
本多 そうなんですね。
小沢 あと4〜5年先だったら、もしかしたら満席にできる力もついているかもしれない。でもそれを待つよりも、せっかくチャンスをいただけるのであれば、今この未知の状態でやった方が何かが動く気がしたんです。すごく怖いですけどね。
本多 怖いでしょうね。
小沢 幕が開いた瞬間、ものすごく寂しい客席が視界に飛び込んでくるかもしれない。そんなことを想像したら足がすくむけど、それでもやりたいって思っちゃったんですよね。
本多 いや、すごいと思います。
小沢 本当ですか。今、その「すごいと思います」の後ろに、(無謀だと思いますけど)がついているように聞こえましたけど(笑)。
本多 いやいや(笑)。面白いなと思います。だって、冷静に考えたらできないですよね。
小沢 できないですね。それこそ勘と勢いじゃないですけど、そういうのがないと。
本多 僕も考えますよ、こんな時期に劇場をつくって埋まらなかったらどうしようって。けどもう動いちゃったから、どうしようもない。
小沢 一緒です。すごいわかる。そうですよね。
本多 腹を括るしかないんです。で、もしダメだったら、また働いて返せばいいかって(笑)。
 

安全策より、無謀でも今やらなきゃと思った道を選ぶ
 
――コロナ禍で演劇界全体が苦境に立たされている中、本多さんは2009年にその幕を閉じたシアタートップスを再開させ、小沢さんは2022年2月、本多劇場で一人芝居を上演します。
 
小沢 そこは愼一郎さんにぜひ聞いてみたいところです。この状況下でそんな大きな決断をしたのって、きっと愼一郎さんを突き動かす何かがあったんだろうなと思って。僕もそうで。今この時期に演劇をやっていいのか分からない時もあって。でも、なんだか知らないけど、つくらなきゃという衝動が湧いてくるんですよね。この衝動がはたしてなんなのか。自分のためなのか、誰かのためなのか、まだそれはよくわからないんですけど。
本多 勢いじゃないですか。勘と勢い。
小沢 怖くないですか。
本多 怖すぎですよ。まあでも、うちはもともと社長がそういう感じなんで(笑)。
小沢  そうなんだ、勘と勢い。
本多 本人は計算しているのかもしれないですけど、僕には勘で動いているようにしか見えないですね(笑)。
小沢 やりたいと思ったことはやる、みたいな。
本多 話を聞くたびに、なに言ってんだろうと思います(笑)。まあ、僕も同じことを社員からよく言われますけど。
小沢 そうなんですね(笑)。
本多 けど、それでもなにかをつくりたい、今やらなきゃいけないだろうと思う。その衝動はたぶん小沢さんと一緒だと思います。だって、安全策を考えたら、絶対にやめといた方がいいですよ、今新しく劇場をオープンするなんて(笑)。
小沢 やらない方が安全だから。
本多 そう。でも、それが本当に安全な道なのかって、実はある程度年月が経ってからじゃないとわからないじゃないですか。もしかしたら、今無謀に見える選択の方が遠い未来から見ると安全なことかもしれないし。だったら、今やっておいた方がいいんじゃないっていう。
小沢 今やらなきゃいけないっていう感覚は僕もわかるかもしれないな。本多劇場で一人芝居をやることも、冷静に考えればやっぱり無謀なんですよ。今の自分に一人であの客席数を満席にできる力なんてない。でも声をかけてもらったとき、今だって思ったんです。
本多 そうなんですね。
小沢 あと4〜5年先だったら、もしかしたら満席にできる力もついているかもしれない。でもそれを待つよりも、せっかくチャンスをいただけるのであれば、今この未知の状態でやった方が何かが動く気がしたんです。すごく怖いですけどね。
本多 怖いでしょうね。
小沢 幕が開いた瞬間、ものすごく寂しい客席が視界に飛び込んでくるかもしれない。そんなことを想像したら足がすくむけど、それでもやりたいって思っちゃったんですよね。
本多 いや、すごいと思います。
小沢 本当ですか。今、その「すごいと思います」の後ろに、(無謀だと思いますけど)がついているように聞こえましたけど(笑)。
本多 いやいや(笑)。面白いなと思います。だって、冷静に考えたらできないですよね。
小沢 できないですね。それこそ勘と勢いじゃないですけど、そういうのがないと。
本多 僕も考えますよ、こんな時期に劇場をつくって埋まらなかったらどうしようって。けどもう動いちゃったから、どうしようもない。
小沢 一緒です。すごいわかる。そうですよね。
本多 腹を括るしかないんです。で、もしダメだったら、また働いて返せばいいかって(笑)。
 

 
劇場が続いていることが、モチベーションのひとつになっている
 
――本多劇場グループの総支配人として、本多さんはいろんな劇団と関わりを持っていると思います。その立場から、劇場と、特に若手の演劇人がもっとどんな関係を築いていったら、演劇界はよくなると思いますか。
 
本多 作品をつくる人たちがいないと、劇場は成立しない。だからやっぱり力になりたいし、できるだけ劇場が気軽に利用してもらえる場所でありたいとは思っています。若い演劇人たちが、自由に自分の好きなことをやれる。うちの劇場が存在する理由はそこだと思うし。だから、いろいろ劇場をやっていますけど、どれも変な形の劇場ばっかりで(笑)。
小沢 変わった形がいっぱいありますよね。そこが好きですけど。
本多 この空間の特性を活かして、自分たちが好きなことを、自分たちの好きな劇場でやればいいんじゃないっていうスタンスなんですよね。おかげで、絶対この劇場じゃなきゃできないっていう作品が出てきたりする。
小沢 わかります。『夢ぞろぞろ』はシアター711でしかできないと思うし。もし本多劇場でやるとしたら、まったく別のものになる気がする。愼一郎さんは作品がないと劇場は成立しないとおっしゃいましたけど、僕からすると劇場がないと何もできないんだなって、去年、最初の緊急事態宣言で劇場が全部閉まったときにすごく感じました。
本多 あの2ヶ月はやっぱり普通じゃなかったですよね。すべての劇場が完全否定された2ヶ月でした。誰もいない状態が2ヶ月も続くと劇場の空気って半ばなくなっちゃうんですよ。緊急事態宣言があけて、最初に『DISTANCE』という無観客生配信公演をやりましたけど、劇場を開けたとき、空気が全然違うって感じましたから。
小沢 あのときの愼一郎さんからは、まず何かをやってみようという姿勢をすごく感じました。
本多 みんなキツいのは同じだから。あんまりキツいってことばっかり言っててもしょうがないよねという気持ちはあったかな。それよりこの先どうなるかわからないけど、まずは劇場を開けようと。そこから徐々に徐々にお客さんが戻ってきて。ようやくこの1年ちょっとで劇場の空気が変わったなと肌で感じているところです。
小沢 そういう意味でも、今もこうして劇場が続いていることが、僕のモチベーションのひとつになっているかもしれない。劇場が存在している限り、次はあそこでやろうって意欲が湧いてくるし。劇場にはありがとうございますという気持ちしかないです。
本多 劇場もつくる側もお互いに支え合わないと生きていけない。ただ、このコロナ禍で今はどっちも体力が落ちているから、そこはやっぱり苦しいところだと思う。
小沢 僕はもう制作のチームもできていて、支えてくれるスタッフさんもいる。おかげでなんとかこうやって公演を打てていますけど、今から演劇を始めようと思っている人には相当厳しい時代だと思う。そこが心配ですよね、これから夢を実現させようとする若い人たちが最初の一歩を踏み出しにくくなっているっていう。
本多 僕もそれが一番心配です。すでにネットワークがある人は誰かしらに頼れるだろうけど、これからの人たちはこの2年くらい何もできない状態ですよね。
小沢 何もわからないし、演劇をやること自体が無謀すぎることになってしまっていますよね。
本多 大学の演劇サークルも新しい部員が入らなくて存続が難しいという話は耳にします。やっぱり2年空いてしまうと、それまで継承してきたノウハウが途切れてしまう。この穴をなんとか埋めなきゃいけないんですけど。
小沢 どうしたらいいんだろうなあ。僕はとにかく自分が演劇を続けることしかないのかもしれないけど。
本多 続けることを続けるという選択をした人がいっぱい出てきて、その人たちがまた劇場で演劇をやっているのを見て、まだやれるんだと思ってもらうしかないですよね。演劇はまだ終わっていないということを、今の若い人たちに見て感じてもらうしかない。
小沢 そういう意味では、今回の一人芝居が、おこがましいけど、いい刺激になればと思います。もちろん周りには支えてくれるスタッフチームがいるけど、舞台の上に立っているのは役者一人だけ。僕は小林賢太郎さんや立川志の輔さんが大好きで、たった一人で舞台に立つことのパワーを信じているんですね。だから、僕が賢太郎さんや志の輔さんの姿から感じたものを今度は自分が次の世代に渡せるようになりたい。たった一人で大きい場所に挑戦することが誰かの力になれたらうれしいです。

 
劇場が続いていることが、モチベーションのひとつになっている
 
――本多劇場グループの総支配人として、本多さんはいろんな劇団と関わりを持っていると思います。その立場から、劇場と、特に若手の演劇人がもっとどんな関係を築いていったら、演劇界はよくなると思いますか。
 
本多 作品をつくる人たちがいないと、劇場は成立しない。だからやっぱり力になりたいし、できるだけ劇場が気軽に利用してもらえる場所でありたいとは思っています。若い演劇人たちが、自由に自分の好きなことをやれる。うちの劇場が存在する理由はそこだと思うし。だから、いろいろ劇場をやっていますけど、どれも変な形の劇場ばっかりで(笑)。
小沢 変わった形がいっぱいありますよね。そこが好きですけど。
本多 この空間の特性を活かして、自分たちが好きなことを、自分たちの好きな劇場でやればいいんじゃないっていうスタンスなんですよね。おかげで、絶対この劇場じゃなきゃできないっていう作品が出てきたりする。
小沢 わかります。『夢ぞろぞろ』はシアター711でしかできないと思うし。もし本多劇場でやるとしたら、まったく別のものになる気がする。愼一郎さんは作品がないと劇場は成立しないとおっしゃいましたけど、僕からすると劇場がないと何もできないんだなって、去年、最初の緊急事態宣言で劇場が全部閉まったときにすごく感じました。
本多 あの2ヶ月はやっぱり普通じゃなかったですよね。すべての劇場が完全否定された2ヶ月でした。誰もいない状態が2ヶ月も続くと劇場の空気って半ばなくなっちゃうんですよ。緊急事態宣言があけて、最初に『DISTANCE』という無観客生配信公演をやりましたけど、劇場を開けたとき、空気が全然違うって感じましたから。
小沢 あのときの愼一郎さんからは、まず何かをやってみようという姿勢をすごく感じました。
本多 みんなキツいのは同じだから。あんまりキツいってことばっかり言っててもしょうがないよねという気持ちはあったかな。それよりこの先どうなるかわからないけど、まずは劇場を開けようと。そこから徐々に徐々にお客さんが戻ってきて。ようやくこの1年ちょっとで劇場の空気が変わったなと肌で感じているところです。
小沢 そういう意味でも、今もこうして劇場が続いていることが、僕のモチベーションのひとつになっているかもしれない。劇場が存在している限り、次はあそこでやろうって意欲が湧いてくるし。劇場にはありがとうございますという気持ちしかないです。
本多 劇場もつくる側もお互いに支え合わないと生きていけない。ただ、このコロナ禍で今はどっちも体力が落ちているから、そこはやっぱり苦しいところだと思う。
小沢 僕はもう制作のチームもできていて、支えてくれるスタッフさんもいる。おかげでなんとかこうやって公演を打てていますけど、今から演劇を始めようと思っている人には相当厳しい時代だと思う。そこが心配ですよね、これから夢を実現させようとする若い人たちが最初の一歩を踏み出しにくくなっているっていう。
本多 僕もそれが一番心配です。すでにネットワークがある人は誰かしらに頼れるだろうけど、これからの人たちはこの2年くらい何もできない状態ですよね。
小沢 何もわからないし、演劇をやること自体が無謀すぎることになってしまっていますよね。
本多 大学の演劇サークルも新しい部員が入らなくて存続が難しいという話は耳にします。やっぱり2年空いてしまうと、それまで継承してきたノウハウが途切れてしまう。この穴をなんとか埋めなきゃいけないんですけど。
小沢 どうしたらいいんだろうなあ。僕はとにかく自分が演劇を続けることしかないのかもしれないけど。
本多 続けることを続けるという選択をした人がいっぱい出てきて、その人たちがまた劇場で演劇をやっているのを見て、まだやれるんだと思ってもらうしかないですよね。演劇はまだ終わっていないということを、今の若い人たちに見て感じてもらうしかない。
小沢 そういう意味では、今回の一人芝居が、おこがましいけど、いい刺激になればと思います。もちろん周りには支えてくれるスタッフチームがいるけど、舞台の上に立っているのは役者一人だけ。僕は小林賢太郎さんや立川志の輔さんが大好きで、たった一人で舞台に立つことのパワーを信じているんですね。だから、僕が賢太郎さんや志の輔さんの姿から感じたものを今度は自分が次の世代に渡せるようになりたい。たった一人で大きい場所に挑戦することが誰かの力になれたらうれしいです。

取材・文:横川良明  写真:山野浩司

 

 

 

 

 

第1弾掲載
本 多 愼 一 郎
2021年11月13日 公開

 

第2弾掲載
2021年12月6日 公開予定

 

第3弾掲載
2021年12月25日 公開予定

 

第4弾掲載
2022年1月15日 公開予定

 

第5弾掲載
2022年2月1日 公開予定

 
 T O P  

第1弾掲載
本 多 愼 一 郎
2021年11月13日 公開

 

第2弾掲載
2021年12月6日 公開予定

 

第3弾掲載
2021年12月25日 公開予定

 

第4弾掲載
2022年1月15日 公開予定

 

第5弾掲載
2022年2月1日 公開予定

 

最速先行販売
11月13日(土)10:00〜11月22日(月)23:59
EPOCH MANホームページのみ取扱い /  特典:特製フォトカード