2022.02.05
 

石崎ひゅーい×小沢道成
表現で大切なのは、気持ちと言葉のバランス


2022.02.05
 

石崎ひゅーい×小沢道成
表現で大切なのは、気持ちと言葉のバランス


 

小沢道成が、今話したい人とじっくり対話を重ねるインタビュー企画。連載最後となる対談相手は、シンガーソングライターの石崎ひゅーいさんです。実は、数年来の友人である石崎さんと小沢。年齢もひとつ違いの2人が、今日は表現者としてじっくり語り合いました。
 
音楽と、演劇。手法はそれぞれ違うけど、自分の内にあるものを表現するという意味では同じ。コロナという未曾有の局面と向き合いながら、今、2人はどんなことを考えているのでしょうか。

 
 


 

小沢道成が、今話したい人とじっくり対話を重ねるインタビュー企画。連載最後となる対談相手は、シンガーソングライターの石崎ひゅーいさんです。
実は、数年来の友人である石崎さんと小沢。年齢もひとつ違いの2人が、今日は表現者としてじっくり語り合いました。
 
音楽と、演劇。手法はそれぞれ違うけど、自分の内にあるものを表現するという意味では同じ。コロナという未曾有の局面と向き合いながら、今、2人はどんなことを考えているのでしょうか。

 


本気で悔しがっているみっちゃんを見てプロだと思った
 
小沢 久しぶり〜!
石崎 久しぶり。いつ以来だっけ?
小沢 いつだろう。コロナでもうずっと会えてなかったから。今回ね、『鶴かもしれない2022』をやるにあたって、いろんな人とお話しさせてもらっていて、最後がひゅーいくん。うれしい、こうやって話せるのが。
石崎 こちらこそありがとう。みっちゃん(小沢)と最初に会ったのはいつだっけ?
小沢 高円寺で(小山田)壮平くんと3人で飲んだ気がする。
石崎 そうだ。壮平がつないでくれたんだ。それで、みっちゃんの舞台も観に行って。
小沢 最初に観てくれたのは確か…。
石崎 一色(洋平)さんとやってた『谺は決して吼えない』かな。
小沢 そうだ! ということは、もう8年近く前になるんだ!
石崎 覚えているのが、僕が観に行ったのが千秋楽とかそのあたりで。みっちゃんがちょっと声を出すのが辛そうだったんだよね。それで、楽屋挨拶に行ったら、みっちゃんが声が出なくて悔しいって。
小沢 誰とも会いたくなくてテーブルの下に潜ってた(笑)。あそこまで声が出ないのは人生で初めてで。恥ずかしい…! 初めて観てもらったお芝居がそれって印象悪いよね。
石崎 いや、僕はそんなことまったく関係なく、ただただすごいなと思って観てたし、何よりそうやって悔しがっているみっちゃんを見てストイックだなと思ったよ。ちょうど僕もその前に全国ツアーをやってて。同じように声が出なくて、30分間、パントマイムで乗り切ったことがあったんだけど。そのときはこれだけやってたら仕方ないだろうぐらいの開き直り方をしてたから(笑)。あそこまで悔しがれるみっちゃんはプロだと思った。
小沢 僕は逆で、声が出ない状態でお客様の前に立ってしまった自分に対してプロ失格だと思って、あのときは本気で役者を辞めようとさえ思った。あれ、なんで声って出なくなるんだろうね…。
石崎 怖いよね。
小沢 そのときに鴻上(尚史)さんに言われたのが、「お前は100で全部やりすぎなんだ」って。100でやるのはいいことだけど、明日も明後日もステージがあるんだから、今後プロとしてやっていきたいなら、80でやることを覚えてなきゃいけないっていうようなことを言われたのね。
石崎 ああ。それは最近僕も意識していることだ。ライブ1本通して、ちゃんとした声で届けられるようにしたいなっていう。
小沢 それはなんでそう思うようになったか聞いてもいい?
石崎 なんだろう。やっぱり現状に対してあんまり満足はしてなくて。立てるステージをもっと大きくしていくためには、今までみたいに自分の持っているものを100%放出するというやり方を変えていかなきゃいけないのかなということに、ここ何年かで気づいて実践しているっていう感じかな。
小沢 そっか。100を80でやるというとちょっと聞こえ方が悪いけど、どちらかと言うと120で出しすぎていたものを100にするっていう感覚に近いのかな。
石崎 難しいよね。120でやると気持ちいいから、そっちに身を任せがちなんだけど。案外観ている方はさ、80とか90ぐらいでやってくれる方がいいっていうことない?
小沢 わかる!
石崎 自分は全然良くなかったと反省していたら、お客さんはめっちゃいいって喜んでいたり。逆に自分はめっちゃ良かったと思っているときに限って、お客さんは今いちだったり。
小沢 本当によくあるよね。自分が客席で演劇を観ていてもあるもん、ああ、この人、今日すごい良かったって感じてるだろうな…って気持ちが冷めること(笑)。
石崎 でもだからと言ってフラットな感じではできないし…。
小沢 自分なりに分析してみたんだけど、それってつまり気持ちと言葉のバランスなのかなって。本来、歌にしてもお芝居にしても、言葉を届けなきゃいけないのに、気持ちが入れば入るほど気持ちのパーセンテージが上がって、言葉の割合が減るでしょ? でも、お客さんにとってまず大事なのって言葉だから。どんなに熱く歌われても、言葉が聞き取れないと感動しないじゃない? 逆に自分が思っている以上にお客さんの心が動いたときって、気持ちの割合が下がる分、言葉が届いたからなんじゃないかって。
石崎 やっぱりそれだよね。
小沢 この間、ひゅーいくんのライブに行って、本当に感動したんだけど。それも言葉がちゃんと聞こえたからなのかなって。なんかね、すべてのフレーズが自分に投げかけられているみたいだった。歌を通して僕のことを好きって言ってくれているように感じちゃって、号泣でした。
石崎 ありがとう。そっか。じゃあ、少しは成長できているのかな。今まさにそこがいちばんのテーマです。
 

本気で悔しがっているみっちゃんを見てプロだと思った
 
小沢 久しぶり〜!
石崎 久しぶり。いつ以来だっけ?
小沢 いつだろう。コロナでもうずっと会えてなかったから。今回ね、『鶴かもしれない2022』をやるにあたって、いろんな人とお話しさせてもらっていて、最後がひゅーいくん。うれしい、こうやって話せるのが。
石崎 こちらこそありがとう。みっちゃん(小沢)と最初に会ったのはいつだっけ?
小沢 高円寺で(小山田)壮平くんと3人で飲んだ気がする。
石崎 そうだ。壮平がつないでくれたんだ。それで、みっちゃんの舞台も観に行って。
小沢 最初に観てくれたのは確か…。
石崎 一色(洋平)さんとやってた『谺は決して吼えない』かな。
小沢 そうだ! ということは、もう8年近く前になるんだ!
石崎 覚えているのが、僕が観に行ったのが千秋楽とかそのあたりで。みっちゃんがちょっと声を出すのが辛そうだったんだよね。それで、楽屋挨拶に行ったら、みっちゃんが声が出なくて悔しいって。
小沢 誰とも会いたくなくてテーブルの下に潜ってた(笑)。あそこまで声が出ないのは人生で初めてで。恥ずかしい…! 初めて観てもらったお芝居がそれって印象悪いよね。
石崎 いや、僕はそんなことまったく関係なく、ただただすごいなと思って観てたし、何よりそうやって悔しがっているみっちゃんを見てストイックだなと思ったよ。ちょうど僕もその前に全国ツアーをやってて。同じように声が出なくて、30分間、パントマイムで乗り切ったことがあったんだけど。そのときはこれだけやってたら仕方ないだろうぐらいの開き直り方をしてたから(笑)。あそこまで悔しがれるみっちゃんはプロだと思った。
小沢 僕は逆で、声が出ない状態でお客様の前に立ってしまった自分に対してプロ失格だと思って、あのときは本気で役者を辞めようとさえ思った。あれ、なんで声って出なくなるんだろうね…。
石崎 怖いよね。
小沢 そのときに鴻上(尚史)さんに言われたのが、「お前は100で全部やりすぎなんだ」って。100でやるのはいいことだけど、明日も明後日もステージがあるんだから、今後プロとしてやっていきたいなら、80でやることを覚えてなきゃいけないっていうようなことを言われたのね。
石崎 ああ。それは最近僕も意識していることだ。ライブ1本通して、ちゃんとした声で届けられるようにしたいなっていう。
小沢 それはなんでそう思うようになったか聞いてもいい?
石崎 なんだろう。やっぱり現状に対してあんまり満足はしてなくて。立てるステージをもっと大きくしていくためには、今までみたいに自分の持っているものを100%放出するというやり方を変えていかなきゃいけないのかなということに、ここ何年かで気づいて実践しているっていう感じかな。
小沢 そっか。100を80でやるというとちょっと聞こえ方が悪いけど、どちらかと言うと120で出しすぎていたものを100にするっていう感覚に近いのかな。
石崎 難しいよね。120でやると気持ちいいから、そっちに身を任せがちなんだけど。案外観ている方はさ、80とか90ぐらいでやってくれる方がいいっていうことない?
小沢 わかる!
石崎 自分は全然良くなかったと反省していたら、お客さんはめっちゃいいって喜んでいたり。逆に自分はめっちゃ良かったと思っているときに限って、お客さんは今いちだったり。
小沢 本当によくあるよね。自分が客席で演劇を観ていてもあるもん、ああ、この人、今日すごい良かったって感じてるだろうな…って気持ちが冷めること(笑)。
石崎 でもだからと言ってフラットな感じではできないし…。
小沢 自分なりに分析してみたんだけど、それってつまり気持ちと言葉のバランスなのかなって。本来、歌にしてもお芝居にしても、言葉を届けなきゃいけないのに、気持ちが入れば入るほど気持ちのパーセンテージが上がって、言葉の割合が減るでしょ? でも、お客さんにとってまず大事なのって言葉だから。どんなに熱く歌われても、言葉が聞き取れないと感動しないじゃない? 逆に自分が思っている以上にお客さんの心が動いたときって、気持ちの割合が下がる分、言葉が届いたからなんじゃないかって。
石崎 やっぱりそれだよね。
小沢 この間、ひゅーいくんのライブに行って、本当に感動したんだけど。それも言葉がちゃんと聞こえたからなのかなって。なんかね、すべてのフレーズが自分に投げかけられているみたいだった。歌を通して僕のことを好きって言ってくれているように感じちゃって、号泣でした。
石崎 ありがとう。そっか。じゃあ、少しは成長できているのかな。今まさにそこがいちばんのテーマです。

 
コロナを経て、どうやって音楽を伝えるかを初めて真剣に考えた
 
小沢 新しいアルバムの『ダイヤモンド』も本当に感動した。好きな曲がいっぱいあるもん。『ジャンプ』に『ブラックスター』に『パラサイト』に『アヤメ』に、あとは『スワンソング』! 僕が感じたのは、『花瓶の花』の頃はさ、つかみたいものがあるけど、つかみきれない葛藤というか、つかめそうでつかめない境目の部分を描いている気がして、それがめちゃくちゃ好きだったんだけど。いろんな曲を経て、この『ダイヤモンド』ではつかんだ手のひらからこぼれ落ちていくものを拾い上げようとしている感覚に思えたの。
石崎 そうかもね。
小沢 あとは今までよりダンスミュージックの要素が強い気がした。家で聴いていてもノリノリになっちゃう。朝聴きたい感じのアルバムだなって思った。
石崎 生活の中で聴けるようなものって少し意識しました。苦手だからさ、そういうの。ずっとわーってつくっていたのを、今回はわりと考えながらつくったというか。
小沢 わーっていうのは、気持ちに任せてみたいな?
石崎 そうそう。今までは出てきたものをそのまま出すというつくり方をしてたんだけど、もうちょっと自分の伝えたいことを最短距離で伝える方法を考えるようになったと言ったらいいのかな。
小沢 そう考えるようになったのはどうして?
石崎 やっぱりコロナが大きいのかな。人と会えなかったし、生活環境が変わった分、より自分が音楽に近づいた感じがして。
小沢 どういうこと?
石崎 今まではライブがあったじゃない? でもライブができない時期が続いて。今はようやくライブもできるようになったけど、それでも声は出しちゃいけないとか、いろいろ制限があって。じゃあ、その中でどうやって歌を伝えるのが正解なんだろうって。そんな今まで考える必要のなかったことを、こういう状況になって、ものすごく考えるようになって。中3から音楽をやってるけど、こんなにもどうやって音楽を伝えればいいか真剣に考えたことってなかったと思う。
小沢 でも、僕が『ダイヤモンド』を聴いてこれだけ感動しているということは、きっとだけど、そうやって考えたことがポジティブな方向に動いてるっていうことだよね。
石崎 そうだと思う。あと、音楽ってやっぱり時代感が大きいから。
小沢 時代感?
石崎 世間の耳っていうか、音楽の聴き方みたいなものが時代によって変わると思うんだよね。今は聴く側も選択肢が増えたから、こちらから発信したものを押し付けられるより、自分で選択したいみたいなところがある気がする。それこそ120でどーんっと来るものより、余白があったものの方が受け入れられやすいというか。生活の中で聴けるものをっていうのも、そんなふうに入り込む余地みたいなものがあった方が今の時代はいいのかなって考えた結果、そうなったっていうのはあるかな。
 

コロナを経て、どうやって音楽を伝えるかを初めて真剣に考えた
 
小沢 新しいアルバムの『ダイヤモンド』も本当に感動した。好きな曲がいっぱいあるもん。『ジャンプ』に『ブラックスター』に『パラサイト』に『アヤメ』に、あとは『スワンソング』! 僕が感じたのは、『花瓶の花』の頃はさ、つかみたいものがあるけど、つかみきれない葛藤というか、つかめそうでつかめない境目の部分を描いている気がして、それがめちゃくちゃ好きだったんだけど。いろんな曲を経て、この『ダイヤモンド』ではつかんだ手のひらからこぼれ落ちていくものを拾い上げようとしている感覚に思えたの。
石崎 そうかもね。
小沢 あとは今までよりダンスミュージックの要素が強い気がした。家で聴いていてもノリノリになっちゃう。朝聴きたい感じのアルバムだなって思った。
石崎 生活の中で聴けるようなものって少し意識しました。苦手だからさ、そういうの。ずっとわーってつくっていたのを、今回はわりと考えながらつくったというか。
小沢 わーっていうのは、気持ちに任せてみたいな?
石崎 そうそう。今までは出てきたものをそのまま出すというつくり方をしてたんだけど、もうちょっと自分の伝えたいことを最短距離で伝える方法を考えるようになったと言ったらいいのかな。
小沢 そう考えるようになったのはどうして?
石崎 やっぱりコロナが大きいのかな。人と会えなかったし、生活環境が変わった分、より自分が音楽に近づいた感じがして。
小沢 どういうこと?
石崎 今まではライブがあったじゃない? でもライブができない時期が続いて。今はようやくライブもできるようになったけど、それでも声は出しちゃいけないとか、いろいろ制限があって。じゃあ、その中でどうやって歌を伝えるのが正解なんだろうって。そんな今まで考える必要のなかったことを、こういう状況になって、ものすごく考えるようになって。中3から音楽をやってるけど、こんなにもどうやって音楽を伝えればいいか真剣に考えたことってなかったと思う。
小沢 でも、僕が『ダイヤモンド』を聴いてこれだけ感動しているということは、きっとだけど、そうやって考えたことがポジティブな方向に動いてるっていうことだよね。
石崎 そうだと思う。あと、音楽ってやっぱり時代感が大きいから。
小沢 時代感?
石崎 世間の耳っていうか、音楽の聴き方みたいなものが時代によって変わると思うんだよね。今は聴く側も選択肢が増えたから、こちらから発信したものを押し付けられるより、自分で選択したいみたいなところがある気がする。それこそ120でどーんっと来るものより、余白があったものの方が受け入れられやすいというか。生活の中で聴けるものをっていうのも、そんなふうに入り込む余地みたいなものがあった方が今の時代はいいのかなって考えた結果、そうなったっていうのはあるかな。

 
ひゅーいくんのライブを観て、やっぱり歌を入れようかなと思った
 
石崎 みっちゃんはどう? やっぱり脚本を書くときも、時代の流れとか空気みたいなものを入れていくわけでしょ?
小沢 そうだね。今まさに『鶴かもしれない2022』の台本もどうしようか考えていて。
石崎 その話、聞きたいな。
小沢 ひゅーいくんにも観てもらった『鶴かもしれない2020』のときはエンターテインメントをやりたかったから、歌を入れたり、いろいろ遊びを入れたんだけど。やっぱりコロナに僕自身もすごく影響を受けたというか。今はあんまりエンターテインメントを楽しもうという気分になれなくて。どうしても1人の時間が多くなりすぎた分、みんな考える時間が増えたじゃない? そういうときに、答えはこれです、「This Is Me」みたいなことをやっても、少なくとも僕は届かない気がしたの。
石崎 余白だよね。
小沢 そう! だからどれくらいエンターテインメントで行くべきか悩んでいる。僕は自分の人生がつくるものにダイレクトに関わってくるタイプだから。僕が生きて感じたこと、たとえばスーパーに行ったら人が多くてイライラしたとか、そういう小さなこともお芝居に入っていく。それこそこのコロナ禍で気をつけなきゃと思ったことが、どうしても1人でいる時間が長い分、1人で考えすぎて、なんだか独り言を言ってるような感じになっちゃうんだよね。
石崎 独り言?
小沢 そう。前までだったら、ちょっと行き詰まったら、友達を誘って飲みに行って、そこでいろいろ話したことが脚本になったりしたんだけど、今はそれができないじゃない? だから、どうしても自分の頭の中にいる小沢Aと小沢Bの会話にしかならないんだよね。
石崎 確かに。人と話すのって大切だよね。
小沢 大切だと思う。普段会話に飢えているせいか、今回いろんな人と対談させてもらってるんだけど、喋れば喋るほど、そうか、そういう考え方もあるんだって影響されちゃって。
石崎 やばい。あんまり変なこと言えないな(笑)。
小沢 大丈夫。もういろいろ影響受けてるから(笑)。さっき今回は歌入れなくてもいいかなと思っていたって言ったじゃない? でも、この間のひゅーいくんのライブで、ひゅーいくんが歌っているのを見て、やっぱり歌も入れちゃおうかなと思っちゃって(笑)。
石崎 影響されたんだ(笑)。
小沢 めちゃくちゃされました(笑)。『鶴かもしれない』に出てくる男の人がミュージシャンっていう設定だから、彼がまだ未完成の曲をつくっているシーンをつくって、そこで歌を入れたらどうだろうって。ひゅーいくんがライブで『スワンソング』を歌っているのを泣きながら聴いていたら、パッてそんなイメージが浮かんだの。「これは違うな」とかブツブツ言いながら、それが次第にメロディになっていくみたいなシーンがあったら素敵だなって。まだどうするかわからないけど、そういうことは考えている。
石崎 いいな。僕は聴きたいけどな、みっちゃんの歌。あとは美術も好きなんだよね。前の『鶴かもしれない2020』のときもさ、壁が動いたり、いろんなところに扉がついたりしてて面白かったもん。あれ、全部みっちゃんの手づくりなんでしょ? よくつくったなと思った。
小沢 今回は山本貴愛さんというプロの方にお願いすることにしたんだけど、楽しみにしていてほしいのが、本多劇場って天井が高いじゃない? 今までは高さがなかったから、上下の動きをつくれなかったんだけど、今回は高さがある分、それをうまく活かしたものにしようと思っていて。
石崎 そうなんだ。でもあの手づくり感みたいなものは残すんでしょう?
小沢 たぶん残るんじゃないかな。ラジカセ3台と会話をするという部分はそのままだし。ずっと自分だけで考えていても、出てくるアイデアに限りがある気がして。もしかしたらミュージシャンの方が他の人とコラボする感じと似ているのかもしれない。誰かの刺激をもらって、そこから生まれてくるものを信じてみたくて。だから今回は美術は僕が作らずに、新しい刺激を貰おうと山本さんにお願いすることにしました。
 

ひゅーいくんのライブを観て、やっぱり歌を入れようかなと思った
 
石崎 みっちゃんはどう? やっぱり脚本を書くときも、時代の流れとか空気みたいなものを入れていくわけでしょ?
小沢 そうだね。今まさに『鶴かもしれない2022』の台本もどうしようか考えていて。
石崎 その話、聞きたいな。
小沢 ひゅーいくんにも観てもらった『鶴かもしれない2020』のときはエンターテインメントをやりたかったから、歌を入れたり、いろいろ遊びを入れたんだけど。やっぱりコロナに僕自身もすごく影響を受けたというか。今はあんまりエンターテインメントを楽しもうという気分になれなくて。どうしても1人の時間が多くなりすぎた分、みんな考える時間が増えたじゃない? そういうときに、答えはこれです、「This Is Me」みたいなことをやっても、少なくとも僕は届かない気がしたの。
石崎 余白だよね。
小沢 そう! だからどれくらいエンターテインメントで行くべきか悩んでいる。僕は自分の人生がつくるものにダイレクトに関わってくるタイプだから。僕が生きて感じたこと、たとえばスーパーに行ったら人が多くてイライラしたとか、そういう小さなこともお芝居に入っていく。それこそこのコロナ禍で気をつけなきゃと思ったことが、どうしても1人でいる時間が長い分、1人で考えすぎて、なんだか独り言を言ってるような感じになっちゃうんだよね。
石崎 独り言?
小沢 そう。前までだったら、ちょっと行き詰まったら、友達を誘って飲みに行って、そこでいろいろ話したことが脚本になったりしたんだけど、今はそれができないじゃない? だから、どうしても自分の頭の中にいる小沢Aと小沢Bの会話にしかならないんだよね。
石崎 確かに。人と話すのって大切だよね。
小沢 大切だと思う。普段会話に飢えているせいか、今回いろんな人と対談させてもらってるんだけど、喋れば喋るほど、そうか、そういう考え方もあるんだって影響されちゃって。
石崎 やばい。あんまり変なこと言えないな(笑)。
小沢 大丈夫。もういろいろ影響受けてるから(笑)。さっき今回は歌入れなくてもいいかなと思っていたって言ったじゃない? でも、この間のひゅーいくんのライブで、ひゅーいくんが歌っているのを見て、やっぱり歌も入れちゃおうかなと思っちゃって(笑)。
石崎 影響されたんだ(笑)。
小沢 めちゃくちゃされました(笑)。『鶴かもしれない』に出てくる男の人がミュージシャンっていう設定だから、彼がまだ未完成の曲をつくっているシーンをつくって、そこで歌を入れたらどうだろうって。ひゅーいくんがライブで『スワンソング』を歌っているのを泣きながら聴いていたら、パッてそんなイメージが浮かんだの。「これは違うな」とかブツブツ言いながら、それが次第にメロディになっていくみたいなシーンがあったら素敵だなって。まだどうするかわからないけど、そういうことは考えている。
石崎 いいな。僕は聴きたいけどな、みっちゃんの歌。あとは美術も好きなんだよね。前の『鶴かもしれない2020』のときもさ、壁が動いたり、いろんなところに扉がついたりしてて面白かったもん。あれ、全部みっちゃんの手づくりなんでしょ? よくつくったなと思った。
小沢 今回は山本貴愛さんというプロの方にお願いすることにしたんだけど、楽しみにしていてほしいのが、本多劇場って天井が高いじゃない? 今までは高さがなかったから、上下の動きをつくれなかったんだけど、今回は高さがある分、それをうまく活かしたものにしようと思っていて。
石崎 そうなんだ。でもあの手づくり感みたいなものは残すんでしょう?
小沢 たぶん残るんじゃないかな。ラジカセ3台と会話をするという部分はそのままだし。ずっと自分だけで考えていても、出てくるアイデアに限りがある気がして。もしかしたらミュージシャンの方が他の人とコラボする感じと似ているのかもしれない。誰かの刺激をもらって、そこから生まれてくるものを信じてみたくて。だから今回は美術は僕が作らずに、新しい刺激を貰おうと山本さんにお願いすることにしました。

 
演じることも、他人に曲を書くことも、全部がインプットになる
 
小沢 ひゅーいくんは演劇を観ていてインスパイアされることってない?
石崎 観ていてもあるけど、それ以上にやったあとの方があるかな。新しい曲が一気に5曲とか生まれたりする。
小沢 マジで?
石崎 めっちゃインプットになるんだと思う。演じているときって、自分の視点じゃないじゃん? その役になって何ヶ月間か過ごしていると、その間は役に近い視点でいろんなことを見ることになるから。そこで得たものを持って帰って創作に活かすっていうのは結構ある。
小沢 すごいね。僕にとっては演劇をすることがアウトプットだから、インプットだと思ったことはなかった。
石崎 インプットだね。演じることは、インプット。
小沢 なんか悔しくなってきた。僕も言ってみようかな、演じることはインプットですって(笑)。あ、そうだ、作詞についても聞きたくて。今まさに『鶴かもしれない2022』で使う曲の歌詞を書こうとしているんだけど、台詞と同じかと思いきや、考えすぎちゃってるのかな、なんかすごいクサい感じがして。
石崎 難しいよね。メロディーに合わせてみると、あんまりクサくないみたいな場合もあるし。
小沢 ひゅーいくんは普段曲からつくるの? それとも歌詞から?
石崎 同時進行でつくっちゃうかな。メロディが先にあると結構助けられるから、歌詞が本当に出てこないときは、メロディーをどんどん組み立てていっちゃって、それにはまる言葉を選んでいくっていうやり方をするときもあるけど。
小沢 なるほどね。なんかどうしても韻を踏んだりとか、カッコよくしようという欲が出ちゃって。ひゅーいくんの『トラガリ』とかさ、「だ、だって僕は軽いから」って歌詞で噛むでしょ? あれとか面白いよね。日常では確かにそういうふうにつっかえることってあるけど、歌詞でそんなのやってる人見たことないから、すごいなと思った。
石崎 初期の頃はそういう話し言葉をそのまま入れる感じが好きだったんだよね。
小沢 うまい歌詞を書けるようになりたいんだけど、なかなかうまくいかなくて。
石崎 いけるでしょ。だって脚本書いてるんだから。
小沢 ひゅーいくんは脚本書いてみたいと思ったりする?
石崎 余裕ができたら、いつか書いてみたいなとは思うけど。前に『さよなら、東京メリーゴーランド』という書き下ろしの短編小説を書いたことがあって、すごく大変だったから、簡単に手を出しちゃいけないなという気持ちがあるんだよね。物語ってさ、台詞が難しいよね。会話を書くのがなかなかできない。
小沢 そっか。僕は普段から頭の中で会話させて、それを脚本にしているから、会話を書くのはそんなに苦じゃないんだけど、逆に独白があんまり書けないんだよね。だから歌詞が書けないのかな。
石崎 そうだね。僕はむしろ歌詞で会話をさせることってほとんどないから、だから会話を書くのが難しいのかも。
小沢 そこの違いだろうね。じゃあ歌詞を書くときに、誰か自分以外の人格を宿らせてみたいなことはあんまりしない?
石崎 自分の曲だとしないかも。むしろ他の人に楽曲提供をしてわかったんだけど、他人の曲を書く方が自由度が高いんだよね。その人になったつもりで想像で書ける分、言葉とか表現の範囲が広がるの。自分の曲となると、自分の中にないものを書くと嘘だなと思っちゃう。それで、今は楽曲提供をして出てきた表現を自分の音楽に応用するようにしてて。
小沢 つまり誰かのために曲を書くことが、いいインプットになってるってことでしょ?
石崎 そう。本当にそう。
小沢 え〜! お芝居も楽曲提供もインプットになるってすごくない?(笑)
 

演じることも、他人に曲を書くことも、全部がインプットになる
 
小沢 ひゅーいくんは演劇を観ていてインスパイアされることってない?
石崎 観ていてもあるけど、それ以上にやったあとの方があるかな。新しい曲が一気に5曲とか生まれたりする。
小沢 マジで?
石崎 めっちゃインプットになるんだと思う。演じているときって、自分の視点じゃないじゃん? その役になって何ヶ月間か過ごしていると、その間は役に近い視点でいろんなことを見ることになるから。そこで得たものを持って帰って創作に活かすっていうのは結構ある。
小沢 すごいね。僕にとっては演劇をすることがアウトプットだから、インプットだと思ったことはなかった。
石崎 インプットだね。演じることは、インプット。
小沢 なんか悔しくなってきた。僕も言ってみようかな、演じることはインプットですって(笑)。あ、そうだ、作詞についても聞きたくて。今まさに『鶴かもしれない2022』で使う曲の歌詞を書こうとしているんだけど、台詞と同じかと思いきや、考えすぎちゃってるのかな、なんかすごいクサい感じがして。
石崎 難しいよね。メロディーに合わせてみると、あんまりクサくないみたいな場合もあるし。
小沢 ひゅーいくんは普段曲からつくるの? それとも歌詞から?
石崎 同時進行でつくっちゃうかな。メロディが先にあると結構助けられるから、歌詞が本当に出てこないときは、メロディーをどんどん組み立てていっちゃって、それにはまる言葉を選んでいくっていうやり方をするときもあるけど。
小沢 なるほどね。なんかどうしても韻を踏んだりとか、カッコよくしようという欲が出ちゃって。ひゅーいくんの『トラガリ』とかさ、「だ、だって僕は軽いから」って歌詞で噛むでしょ? あれとか面白いよね。日常では確かにそういうふうにつっかえることってあるけど、歌詞でそんなのやってる人見たことないから、すごいなと思った。
石崎 初期の頃はそういう話し言葉をそのまま入れる感じが好きだったんだよね。
小沢 うまい歌詞を書けるようになりたいんだけど、なかなかうまくいかなくて。
石崎 いけるでしょ。だって脚本書いてるんだから。
小沢 ひゅーいくんは脚本書いてみたいと思ったりする?
石崎 余裕ができたら、いつか書いてみたいなとは思うけど。前に『さよなら、東京メリーゴーランド』という書き下ろしの短編小説を書いたことがあって、すごく大変だったから、簡単に手を出しちゃいけないなという気持ちがあるんだよね。物語ってさ、台詞が難しいよね。会話を書くのがなかなかできない。
小沢 そっか。僕は普段から頭の中で会話させて、それを脚本にしているから、会話を書くのはそんなに苦じゃないんだけど、逆に独白があんまり書けないんだよね。だから歌詞が書けないのかな。
石崎 そうだね。僕はむしろ歌詞で会話をさせることってほとんどないから、だから会話を書くのが難しいのかも。
小沢 そこの違いだろうね。じゃあ歌詞を書くときに、誰か自分以外の人格を宿らせてみたいなことはあんまりしない?
石崎 自分の曲だとしないかも。むしろ他の人に楽曲提供をしてわかったんだけど、他人の曲を書く方が自由度が高いんだよね。その人になったつもりで想像で書ける分、言葉とか表現の範囲が広がるの。自分の曲となると、自分の中にないものを書くと嘘だなと思っちゃう。それで、今は楽曲提供をして出てきた表現を自分の音楽に応用するようにしてて。
小沢 つまり誰かのために曲を書くことが、いいインプットになってるってことでしょ?
石崎 そう。本当にそう。
小沢 え〜! お芝居も楽曲提供もインプットになるってすごくない?(笑)

 
両極を見せられるのが、みっちゃんの強み
 
小沢 話を聞いて思ったんだけど、やっぱりひゅーいくんはちょっと役者に近いところがあるんだろうね。他人の曲を書いた方が表現の範囲が広がるのも、その人の気持ちになりきるからでしょ?
石崎 うん。だから、お芝居は好き。演劇はね、またやりたいなっていう気持ちがある。
小沢 劇団鹿殺しの『彼女の起源』に出ているのを観たけど、僕もひゅーいくんが演劇をやってる姿は好きなんだよね。なんだろう、ひゅーいくんしか持っていないものがある。俳優さんでは出せないよなあっていうパワーみたいなものがあって。
石崎 あるんだ?
小沢 あるんだよ。『彼女の起源』のあと、ライブを観させてもらって納得したもん。ひゅーいくんの歌には、伝えたい想いというか、言葉にならない何かがある。だから舞台上でお芝居をやっているときも、あんなにも伝わってくるんだろうなって。あのパワーは、僕含め俳優さんも得なきゃいけないものだと思った。
石崎 そこで言うと、僕はみっちゃんのいいところは2つできることだと思う。核が2つある。
小沢 2つできるというのは、女性役と男性役とか、そういうこと?
石崎 それもあるけど、それだけじゃなくて。陰と陽というか、人間の美しいところと醜いところというか、そういう両極を見せられるのが、みっちゃんの強み。普通、ひとりの人が両方表現しようとしたら、どっちかは嘘になるんだよ。でも、みっちゃんは嘘にならない。どっちもリアルというか、生々しい感じがする。僕が『鶴かもしれない2020』を観て泣いたのも、そこが僕の琴線にふれたからだと思う。
小沢 うれしい。たぶんそれは僕がひゅーいくんのライブから感じ取ってるものとちょっと似てるかも。今日話してみて改めてわかったことは、ひゅーいくんも気持ちでやっている人なんだよね。だから好きなんだと思う、ひゅーいくんの音楽が。
石崎 そうだね。気持ちは大事にしたい。
小沢 だからひゅーいくんも気持ちがある人の表現を見ると心に来るんじゃないかな。こっぱずかしい言葉だけど、音楽も演劇も大事なのは、気持ち。ただし、気持ちはあるけど、気持ち良くなりすぎずにっていう感じだよね。
石崎 本当にそう。それが永遠のテーマです(笑)。
 

両極を見せられるのが、みっちゃんの強み
 
小沢 話を聞いて思ったんだけど、やっぱりひゅーいくんはちょっと役者に近いところがあるんだろうね。他人の曲を書いた方が表現の範囲が広がるのも、その人の気持ちになりきるからでしょ?
石崎 うん。だから、お芝居は好き。演劇はね、またやりたいなっていう気持ちがある。
小沢 劇団鹿殺しの『彼女の起源』に出ているのを観たけど、僕もひゅーいくんが演劇をやってる姿は好きなんだよね。なんだろう、ひゅーいくんしか持っていないものがある。俳優さんでは出せないよなあっていうパワーみたいなものがあって。
石崎 あるんだ?
小沢 あるんだよ。『彼女の起源』のあと、ライブを観させてもらって納得したもん。ひゅーいくんの歌には、伝えたい想いというか、言葉にならない何かがある。だから舞台上でお芝居をやっているときも、あんなにも伝わってくるんだろうなって。あのパワーは、僕含め俳優さんも得なきゃいけないものだと思った。
石崎 そこで言うと、僕はみっちゃんのいいところは2つできることだと思う。核が2つある。
小沢 2つできるというのは、女性役と男性役とか、そういうこと?
石崎 それもあるけど、それだけじゃなくて。陰と陽というか、人間の美しいところと醜いところというか、そういう両極を見せられるのが、みっちゃんの強み。普通、ひとりの人が両方表現しようとしたら、どっちかは嘘になるんだよ。でも、みっちゃんは嘘にならない。どっちもリアルというか、生々しい感じがする。僕が『鶴かもしれない2020』を観て泣いたのも、そこが僕の琴線にふれたからだと思う。
小沢 うれしい。たぶんそれは僕がひゅーいくんのライブから感じ取ってるものとちょっと似てるかも。今日話してみて改めてわかったことは、ひゅーいくんも気持ちでやっている人なんだよね。だから好きなんだと思う、ひゅーいくんの音楽が。
石崎 そうだね。気持ちは大事にしたい。
小沢 だからひゅーいくんも気持ちがある人の表現を見ると心に来るんじゃないかな。こっぱずかしい言葉だけど、音楽も演劇も大事なのは、気持ち。ただし、気持ちはあるけど、気持ち良くなりすぎずにっていう感じだよね。
石崎 本当にそう。それが永遠のテーマです(笑)。

取材・文:横川良明  写真:山野浩司

第1弾掲載
本 多 愼 一 郎
2021年11月13日 公開

 

第2弾掲載
徳 永 京 子
2021年12月6日 公開

 

第3弾掲載
小 泉 今 日 子
2021年12月25日 公開

 

第4弾掲載
谷 賢 一
2022年1月22日 公開

 

第5弾掲載
石 崎 ひ ゅ ー い
2022年2月5日 公開

  
 T O P  

第1弾掲載
本 多 愼 一 郎
2021年11月13日 公開

 

第2弾掲載
徳 永 京 子
2021年12月6日 公開

 

第3弾掲載
小 泉 今 日 子
2021年12月25日 公開

 

第4弾掲載
谷 賢 一
2022年1月22日 公開

 

第5弾掲載
石 崎 ひ ゅ ー い
2022年2月5日 公開